2023年9月8日から10月28日の日程で開催されるラグビーワールドカップ2023。今大会はフランスでの開催となり、パリのスタッド・ド・フランスをはじめとする9つの会場で熱戦が繰り広げられます。
「五郎丸ポーズ」が大ブームとなったラグビーW杯2015年大会で日本代表はラグビー強豪国の南アフリカを破り、2019年日本大会では強豪アイルランドとスコットランドを破り、初の準々決勝進出を決めました。日本国内ではここ数年でラグビーへの注目度が高まっています。
そこで今回は、今大会の優勝候補の一つ、ラグビーW杯で3度の優勝経験があるラグビーニュージーランド代表オールブラックスについてまとめてみました!
オールブラックスとは?
「オールブラックス」とはラグビーニュージーランド代表の愛称です。オールブラックスという愛称は、1890年代には広まっていたとのことで、ニュージーランド代表が着ている黒色のジャージに由来するものではないかと考えられています。
「まさに想像通り」と思う方が大半かと思いますが、一方でこんな説があるのはご存知でしょうか。
その説によると、ニュージーランド代表とイギリス代表の試合を取材した新聞記者が、ニュージーランド代表の全員がまるでバックスのように俊敏に走り回ることから「All Backs(オールバックス)」と表現しました。これが後に新聞紙上では誤って「All Blacks(オールブラックス)」と記載され、オールブラックスという愛称が浸透したというのです。
現在、この説を証明するものは一切残っていないそうですが、この説を有力とする見方もあります。
オールブラックスの歴史
ラグビー王国誕生のきっかけ
ラグビー王国誕生のきっかけになったのは1860年代後半、医学者で政治家のデビッド・モンロさんの息子であるC.J.モンロさんが留学先のロンドンでラグビーと出会い、ニュージーランドへ伝えたとされています。
ラグビーの普及、オールブラックスの誕生
その後、学校間でラグビーの試合が行われたり、海外からもニュージーランドへ遠征にやってくるようになりました。そして1892年にニュージーランド・ラグビーフットボール協会が設立。初の公式テストマッチは1903年にシドニーで行われたラグビーオーストラリア代表(ワラビーズ)との試合になります。
1905年から1906年にかけて初のブリテン諸島、フランス、アメリカ合衆国を回る北半球遠征が行われ、この頃にオールブラックスと呼ばれるようになったと言われています。この時のメンバー27名は「オリジナル・オールブラックス」と呼ばれ、35選34勝1敗(うちテストマッチ5戦4勝1敗)という成績を残し、伝説のチームとされています。
低迷期を経て、再復活
1987年開催の第1回ラグビーワールドカップで優勝を飾ったオールブラックス。1998年頃から低迷期を迎え、しばらくラグビーW杯優勝から遠ざかることになります。しかし、2004年頃から復活の兆しが見え始めたオールブラックスは、2011年開催の第7回ラグビーワールドカップで悲願の優勝を果たしました。
そして2015年の第8回大会でも優勝し、ラグビーワールドカップ史上初の連覇を達成しました。
現時点(2023年3月20日)でのワールドラグビー男子ランキングでは、オールブラックスは3位。2位がフランス、1位がアイルランドとなっています。ちなみに日本代表は10位です。
オールブラックスの象徴「ハカ」とは?
ハカとはオールブラックスが国際試合前に行うニュージーランドの先住民・マオリの伝統舞踊です。「カ・マテ、カ・マテ」で始まるハカをみなさんも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
1991年頃には中外製薬の栄養ドリンク「グロンサンDX」のCMで、俳優の田中実さんが「頑張って頑張って仕~事、頑張って頑張って遊~び」とスーツ姿でハカを踊っていました。これ以外にも日本のドラマやCMでハカをモデルにしたものが度々放送されています。
「ハカ」が持つ意味とは
ハカは本来はマオリ族の戦士が、戦いの前に手を叩き、足を踏み鳴らして自らの力を誇示し、相手を威嚇する時に行う舞踊で、オールブラックスの試合前のハカも同じような意味合いが込められています。
現在は国賓や海外からの渡航者を歓迎する舞として披露されたり、相手に対する敬意や感謝の意を表する舞として披露されることもあります。
オールブラックスのハカの中心で声を張り上げハカを先導するリードは、伝統的にマオリ族の血を引く選手が担っています。しかし、過去にはその例外もあったようで、2004年からはサモア系移民の元オールブラックスのキャプテン、タナ・ウマガ選手が特例としてリードを任されることもありました。
マオリ族出身の選手とそうではない選手の見分け方ですが、まずは顔立ちが西洋人とは異なります。そして、「タ・モコ」という伝統的なマオリのタトゥーが入っています。タ・モコの模様は様々なようですが、マオリ族出身の選手の腕には渦巻模様のタトゥーが入っていることが多いです。
2種類ある「ハカ」の使い分けは?
通常、オールブラックスが披露するのは「カ・マテ」という伝統的なハカですが、2005年以降はオールブラックス独自のハカ「カパ・オ・パンゴ」も誕生。
「カパ・オ・パンゴ」については「ここぞ!」という時に披露されると聞いたことがありましたが、実際は違うようで、まずはキャプテンがリードを指名し、そしてどのハカにするか発表します。「今週はカパ・オ・パンゴでいきます」といった感じだそう。
また、新加入の選手がいる時はカパ・オ・パンゴではなくカ・マテしかやらないとのこと。その理由は、新人選手がハカをすることに緊張してしまう可能性があるからだそうです。2つのハカの使い分けは意外とシンプルな理由でした。
ラグビーニュージーランド代表オールブラックスのメンバー
下記は2022年10月時点でのラグビーニュージーランド代表選手です。FL/No.8のサム・ケイン選手がオールブラックスのキャプテンを務めています。
2022年10月29日に国立競技場で行われたリポビタンDチャレンジカップ2022の「日本 VSニュージーランド」では、SHのアーロン・スミス選手がハカのリードを務めていました。ゲームコントロールやゲームメイクを担うSH。オールブラックスのSHを務めるアーロン・スミス選手は、今年開催のラグビーワールドカップでの注目選手の一人となります。
ポジション | 選手 | 所属 | キャップ数 |
PR | ジョージ・バウワー | クルセイダーズ | 19 |
ネポ・ラウララ | ブルーズ | 42 | |
アンガス・タアバオ | チーフス | 22 | |
オファ・トゥウンガファシ | ブルーズ | 48 | |
イーサン・デグルート | ハイランダーズ | 10 | |
タイレル・ロマックス | ハリケーンズ | 20 | |
HO | デイン・コールズ | ハリケーンズ | 84 |
サミソニ・タウケイアホ | チーフス | 17 | |
コーディー・テイラー | クルセイダーズ | 72 | |
LO | スコット・バレット | クルセイダーズ | 55 |
ブロディ・レタリック | チーフス | 98 | |
トゥポウ・ヴァアイ | チーフス | 15 | |
サム・ホワイトロック | クルセイダーズ | 140 | |
FL/No.8 | サム・ケイン | チーフス | 85 |
シャノン・フリゼル | ハイランダーズ | 21 | |
アキラ・イオアネ | ブルーズ | 19 | |
ダルトン・パパリィイ | ブルーズ | 18 | |
アーディー・サヴェア | ハリケーンズ | 67 | |
ホスキンス・ソトゥトゥ | ブルーズ | 12 | |
SH | フィンレイ・クリスティー | ブルーズ | 12 |
フォラウ・ファカタヴァ | ハイランダーズ | 2 | |
アーロン・スミス | ハイランダーズ | 111 | |
TJ・ペレナラ | ハリケーンズ | 78 | |
SO | ボーデン・バレット | ブルーズ | 109 |
リッチー・モウンガ | クルセイダーズ | 41 | |
スティーヴン・ペロフェタ | ブルーズ | 1 | |
CTB | デービッド・ハビリ | クルセイダーズ | 21 |
リーコ・イオアネ | ブルーズ | 56 | |
アントン・ライナートブラウン | チーフス | 56 | |
ロジャー・トゥイヴァサ=シェック | ブルーズ | 2 | |
ブレイドン・エノー | クルセイダーズ | 5 | |
WTB/FB | ケイレブ・クラーク | ブルーズ | 11 |
レスター・ファインガアヌク | クルセイダーズ | 2 | |
ウィル・ジョーダン | クルセイダーズ | 21 | |
セヴ・リース | クルセイダーズ | 21 | |
ジョーディー・バレット | ハリケーンズ | 45 |
オールブラックスのラグビーW杯での成績
ラグビーワールドカップではこれまでに最多タイとなる3度の優勝歴があるオールブラックス。ワールドカップ以外では、ザ・ラグビーチャンピオンシップで史上最多の18回の優勝を誇ります。
また、オールブラックスは唯一テストマッチで全ての対戦相手に勝ち越しているチームで、過去に戦った試合の約4分の3の試合に勝利。この勝率はサッカーのブラジル代表を上回る勝率とされています。
開催年 | 開催都市 | 成績 |
1987年 | ニュージーランド/オーストラリア | 優勝 |
1991年 | イングランド/フランス/ウェールズ/スコットランド | 3位 |
1995年 | 南アフリカ共和国 | 準優勝 |
1999年 | ウェールズ | 4位 |
2003年 | オーストラリア | 3位 |
2007年 | フランス | ベスト8 |
2011年 | ニュージーランド | 優勝 |
2015年 | イングランド | 優勝 |
2019年 | 日本 | 3位 |
まとめ
今回は、ラグビー強豪国の一つで、ラグビーワールドカップ2023の優勝候補でもあるラグビーニュージーランド代表オールブラックスについてまとめてみました。
もう何年も前になりますが、国立競技場でリポビタンDチャレンジカップを観戦した時に、オールバックスのハカを生で見たことがあります。観客席からハカの輪は遠く、選手の顔も分からない距離でしたが、とても迫力があり鳥肌が立ったのを覚えています。
こういった試合前に踊られる「ウォークライ」は、オールブラックスのハカ以外にも、トンガ代表の「シピタウ」やサモア代表の「シヴァタウ」などがあり、ラグビーW杯の際には見比べてみるのも楽しいかもしれませんね。
ラグビーワールドカップ2023でオールブラックスの魂のこもったハカが披露されるのを楽しみにしています!